世間では港区女子や相撲女子といった多種多様な女子が何かと話題になるが、その男子バージョンたるものも存在する。
彼を当てはめるなら、きっと動物ハンター系男子だろう。
「この白クマケーキのムース、段々に盛り付けられているから立体感があるね。中に入ってるオレンジのジュレが甘酸っぱいらしいから、ムースとの相性が良さそう」
季節限定で売られている白クマケーキに目を輝かせる彼に、そうだね、と私は愛想よく返す。
動物ハンター系男子の前には“デザート”がつく。
元々甘いものが大好きな彼は、そこにプラス動物を模したデザートを好んでよく食べる。彼に付き合って食べた動物の数は、軽く三十頭は超えているだろう。
「この白クマが被ってるチョコの帽子、美代ちゃんがよく被ってる帽子に似てるね。もっと可愛く見えてくる」
は? かわいいかよ?
反射的に荒れた口調で返しそうになるも、何とかぐっと堪えた。
きらきらの笑顔が眩しすぎるあまり、思わず目を細める。
「えへへ、ありがとー」
私の無慈悲なフォーク捌きによって、すでに顔が半壊しているシロクマをさっと手で隠しながら、私が思うかわいいを総動員して全力で乗っかる。
かわいいものに対して、攻撃的な衝動に駆られることを、キュートアグレッションと言うらしい。
彼と付き合ってから、動物を模したかわいいスイーツ情報のほかに、そういった謎知識が増えつつある。
「あ」
短い声を上げて、彼が不意に手を伸ばした。指先が軽く口元近くを掠める。
「クリームついてる」
……あぁ、彼はまさしくハンターだ。
ハンターに盗まれっぱなしの心が、どんどこと騒いでうるさい。
オレンジジュレの程よい甘酸っぱさを舌先に感じながら、消え入るような小さな声でお礼の言葉を伝えると、彼は柔らく微笑んで、確実に私を仕留めに来るのだった。