あれ、どうされました?なにやらお困りのご様子ですね。私で良ければお力になりましょう。
こう見えても私はなかなか頼りになるともっぱらの評判です。ささ、ご遠慮なんてなさらずに。
ははあ、今日から泊まる予定のペンションが見つからない、地図を頼りに林道を進んだはいいけれど迷ってしまった、と。 なるほど、それは正に私の出番じゃないでしょうか。
産まれてこの方、北見の自然の山々に育てられてきております。この辺りなんぞ庭も同然です。そして、なんと奇遇なことに、私もそのペンションに向かう途中でしたので、もしよろしければ道中引き続きお話し相手になっていただけませんか?

普段はこういう山や森にはあまり行くことはありませんか?街の中にいると、木々は街路樹くらいで森と呼べるような木だらけ自然だらけの場所は縁遠いものですよね。樹木に囲まれて変わり映えのない景色の中、どちらに進んでるかわからなってしまうでしょう。でも、慣れてきたら微妙な違いにも気付けるようになるんです。例えば、あの木は大きな洞があって覗き込んでみたくなりませんか。こっちの木はぼこぼこした感じで登りやすそうな形をしていますよね。そこの木は見てください、一カ所だけ色の違う葉が付いている枝がありますよ。
見慣れないものって、親しみが薄いということだと思うんですね。だから、じっくり見ようとするほどの思い入れがなくて精査できないから、結局同じようにしか見えなくなってしまうんです。
それは、仕方のないことだと思うんですけど、そこで同じじゃんって思うんじゃなくて、同じなのか?って思ってほしいというか……。上手く話しをまとめられなくてすみません。
何が言いたいかといいますと、せっかく都会から真逆の異世界に来て下さったんですから、是非この北見のことを好きになっていってほしいなあってことなんです。好きになって下さったら嬉しいし、また来たいって思ってもらえたらそれ以上の喜びはありません。
たとえそれがどんなに遠い異世界だとしても、また来たいという気持ちがある限り、再び訪れることはできるのですから。

さて、長々と私の話に付き合わせてしまって申し訳ありませんでした。
ここがあなたの旅の目的地でありスタート地点となるペンションです。実は迷っていたところからこんなにすぐだったんですよ。
さあどうぞどうぞ、上がっていってください。お履物はこちらに入れておきますね。……どうかいたしましたか?そんな怪訝そうなお顔をなさって。ふふ、びっくりしましたか?

それでは、改めまして。
ようこそ、いらっしゃい、我が家へ。