札幌から真っ直ぐ洞爺へ向かい、一日のんびりと温泉でゆっくり過ごすはずだった。
そう。中山峠の道の駅で「あげいも」を買い、和気藹々と峠を下りたところまでは順調だった。
「お父さん、おっきい建物があるよ!」
「いっぱい屋台でてる!」
二三○号線をひた走る。
峠を下りてすぐにある喜茂別町。道路沿いにとても目立つ大きな道の駅があった。
「休憩がてらちょっと寄ってみましょうよ。急ぐ旅でもないんだし」
札幌から約一時間半ほど。
途中の峠でも休憩したはずだが、妻や子供にせがまれ道の駅に止まることにした。
今日は快晴で、駐車場には沢山の車が止まっていた。
その目の前には客を誘うようにたくさんのキッチンカーが止まっている。
「お父さんトイレ行ってくるからな」
はしゃいでいる娘息子と妻を置いて、私はトイレにいった。
何度かこの場所を通ったことはあるが、道の駅に立ち寄ったのははじめてだ。
田舎、と呼ばれる場所なのかも知れないが施設はとても大きく、そして綺麗だった。これなら人が来るのも頷ける。
「あなたちょっと見てよ」
トイレから戻ると妻に手招きされた。
彼女が見ていたのは地元で取れた野菜だった。長いも、トマト、ごぼう。どれもスーパーで買うより大ぶりで、おまけに安い。
「これ、美味しそうじゃない?」
「そうだけど……これから温泉泊まりに行くんだぞ」
「明日帰りに寄って買いましょうよ」
妻は目を輝かせ野菜を色々と手に取っている。
子供たちも珍しい場所に興味津々だ。
「お父さん、ソフトクリーム買って!」
「僕、フランクフルトが良い!」
子供に両手を持たれ、外へ連れ出される。
喜茂別でこれなんだ。留寿都の遊園地の前を通ろうものなら一体どんな騒動になるんだろう。
絶対に遊園地行きたいとかいいだすぞ、これ。
「……ま、いいか。ドライブに寄り道はつきものだ」
通りがかった人が手にしていたソフトクリームを見ると自分も食べたくなってくる。
旅行というものは心を癒やすが、同時に財布の紐も緩ませる。
たまにはこんなこともいいだろうと、私はとことん家族の我が儘に付き合うことにした。
洞爺までの道のりはまだまだ長そうだ。