札幌市のとある場所にまつわる恐ろしい話をご存じだろうか。

 大通に面し、近くには公園もあるのどかな住宅地。そこにぽつんと空き地があるのだ。

 そこは地元の人間は皆知っている「いわくつき」の場所。

 家を建てれば霊障が置き、そこに住む人物は必ずこの世のものではないものを見るという。

 ノイローゼになった彼らは数年経たずで立ち退き、家は取り壊され、また空き地に戻る。その繰り返しだ。

 住宅を建てるには最適な場所だが、そのようなことが起きるため駐車場として使用されることが多かった。

 ……だが、駐車場になったとしてもそこに車を停めた人間は時折霊を見るという。

 ある者は「たくさんの火の玉のようなものがみえた」といった。

 ある者は「女性と子供が泣いている声が聞こえた」といった。

 ある者は「寝ているときに体が燃えるように熱くなる夢をみた」といった。

 霊障に遭遇した者は皆、一様に違うものをみたという。

 肝試し好きの学生も、そこだけは絶対に近寄らない。

 通学路を歩く小学生も、噂話をするだけでそこで遊ぶことは絶対にない。

 では――その土地で一体何があったのだろうか。

 ある者は「昔、ここには病院があった」という。

 ある者は「昔、ここに建っていた家の家主が一家心中を謀った」という。

 ある者は「昔、ここに建っていた家が火事で焼け落ち家族がみんな死んだ」という。

 そう。この土地であった真相を知るものは一人もいない。

 皆、この場所でなにがあったのかはわからない。だが、確かにこの場所で明らかに異常な出来事が起きているという事実は存在している。

 つい先日、私は数年ぶりにその場所をとおりかかった。

 かつて駐車場だったはずの例の場所には、なんと一軒の家が建っていた。

 その家主はあの噂を知っているのかは定かではない。

 もしかしたら、今はもう恐ろしいことは起きないのかもしれない。

 だが、その場所を通る度に地元の人間は必ずこういっていた。

 「あそこって、ヤバイ場所だよね」――と。