「洞爺湖ってどうやって行くんだ?」  
俺ははじめて北海道に旅行にやってきたしがない大学生。  
札幌の大学に進学した幼馴染みに会いにはるばる東京からやってきた。  
札幌駅でレンタカーを借り、
二人でドライブしつつ洞爺湖の近くにあるホテルで一泊する予定だったのだけれど――。
「ん? 簡単だよ。ここから石山通りに出てそれを真っ直ぐいけばつくよ」
「は?  友人の言葉に耳を疑った。
「この道を真っ直ぐ?」
「うん」
「一回も曲がらない?」
「多分、一回も曲がらない。カーブくらいはあるけど」  
だってここは札幌の街中だ。  
ここから真っ直ぐ走るだけで百キロ以上先の洞爺につくなんてにわかには信じられない。
「だって百キロ先だぞ?」
「だからそれで着くっていってるじゃん!」  
一瞬喧嘩が始まりそうになって俺は深呼吸した。  
いかんいかん。せっかく楽しい旅行なのに喧嘩なんてしたら台無しだ。
「わかった。とりあえず向かおうか」
「二時間くらいかかるから、途中で休憩しながら行こう」  
そしてようやく車を走らせ、札幌駅をスタート。  
これから長く楽しいドライブの始まりだ。
「本当に真っ直ぐで良いんだな?」
「うんうん。ひたすら真っ直ぐ」  
いわれたとおり、石山通りを突っ走る。  
カーナビもずっと直進を指示されていた。  


札幌の市内を通り抜け、藤野を通り過ぎると徐々に自然が多くなっていく。

「もうすぐ定山渓温泉だよ。足湯でも入っていくか?」
「うわ、本当だ。真っ直ぐ走るだけで温泉街についたよ」  
そして俺たちは一度定山渓温泉の無料の足湯に入ってのんびり休んだ。  
また再び走り出すと今度は中山峠に入った。

「ここ、あげいもが美味しいんだよ。食べて行くか?」
「お、いいね!」  
中山峠の頂上にある道の駅で休憩兼、昼食。  
美味しい豚丼を食べ、
車内のおやつ用に大きいジャガイモが三つも串に刺さった名物の「あげいも」を買った。  

そして中山峠を下り、スキー場や遊園地が有名のルスツを抜けていくと――。

「マジかよ」 「な? だから言ったろ?」  
洞爺湖に到着した。  
目の前に広がる果てしない湖。
空も水面と同じように美しく晴れ渡っていた。
「すげーな、北海道」
「もう少し先にいって、今度は右に曲がると室蘭まで行けるぞ」
「試される大地だな。本当広大だ」  
運転に疲れた体をねぎらうように大きくのびをする。
「湖見て、今日はホテルでのんびりしながら酒でも飲もうぜ!」
「おうよ! あ、帰りに木刀買ってかなきゃ!」
「はは、修学旅行生かよ!!」  
なんて軽口をたたき合いながら、俺たちのひたすら真っ直ぐ突き進むドライブは幕を閉じた。