――嘘みたいに晴れた空の下――
私と、私のクラスの成田大地くんが手をつないで富良野のラベンダー畑を走っている。
笑顔で、2人とも楽しそうに……。
――まさに嘘(もうそう)だった。
「あかね!ねぇ、ねぇってば!!」
同級生の沙耶の声で妄想から我に返った。
「あ……、な、なに?」
沙耶は続ける。
「また成田とのこと考えてたでしょ?」
ギクッとしたが私は首を横に振った。
「あのねぇ、今は、修学旅行中なの!しかも白い恋人パークだよ!?めったにこれないのに……」
私も、
「わかってるって……だからここでお菓子食べてるんじゃん!楽しいよ~!沙耶と一緒に白い恋人パーク!」
沙耶は私を怪しげな目で見ていたけど、楽しいのは事実だし、でも成田くんのことも気になるのもまた事実。
私と沙耶が白い恋人パークでしゃべりながらお菓子を食べていると、なんとそこに、成田くんたちの斑がやってきた。
成田くんは、白い恋人を見ながら、うーん、と考えた様子でギフトを見ている。
私は沙耶に、
「沙耶……、成田くん、ギフト選んでるよ……もしかして好きな人にあげるとかなのかなぁ?」
沙耶は、
「まさかぁ、家族へのお土産とかでしょ?深く考えすぎなんだよ」
私は、そうかなぁ……と思って、成田くんの方を思わずじっと見てしまっていた。
すると、大きいギフトと小さめのギフトを買っているのが見えた。
「ほら、沙耶、小さいギフトも買ってるよ!?」
沙耶はクールに、
「自分で食べるんじゃない?」
といい、私の心配など気にしてもいな様子だった。なんでだろう……。
私たちはそのあとも白い恋人パークを見て回り、楽しく過ごしたかった……のだが、成田くんの買っていたギフトが気になりすぎて全力で修学旅行を楽しむことができなかった。
高校最後の修学旅行……。
高校を卒業したら私は大学に進学する。
沙耶とも別々になるし、ほかに仲のいい友達とも別々の大学になる。……成田くんはどうなんだろう?
その日はホテルに戻り、私の頭の中は成田くんの買っていた白い恋人の小さいギフトのことだらけだった。
大きいギフトは家族に買っていったとしても、あの小さな可愛い包装のしてあるギフトを自分では食べないだろう。
やはり好きな人がいるに違いない……。
あかね、最大の失恋……。しかも部隊は、最後の修学旅行で。最悪すぎる。
そう思った瞬間、ホテルのベッドに横たわっていた私は涙が止まらなくなってきた。
泣いていると、沙耶が声をかけてきた。
「あかね、気にしすぎだよ……、どうしたのさ?いつもの元気なあかねに戻りな?」
沙耶の言葉に、
「元気になれるわけないよ……、ギフト……好きな子いるんだ、成田くん……」
涙交じりに話す私。
すると、スマホが鳴る。
画面を、見てみると、成田くんからだった。
「今から少し、ホテルの外の噴水のところに来れないかな?」
という内容のメッセージ。
私は行く、と沙耶にいい、先生に見つからないように外へと駆け出した。
噴水の前に行くと成田くんがいた。
成田くんは私が泣き顔なのを見て、
「どうしたの?泣いたの?なにかあった?」
と聞いてきてくれたけど、私は、まさか成田くんのことで泣いたなんて言えず、
「ううん、なんでもない」
と一言返した。
成田くんは、
「ごめんね、急に呼び出して。実はあかねちゃんに渡したいものがあって」
私の頭の中は「?」でいっぱいだったが、成田くんが背中に隠していたのは、今日の昼間、白い恋人パークで見た「可愛い包装のギフト」だった。
「……これを、私に?」
「うん、口に合うかはわからないけど……受け取ってくれたら嬉しい」
「あかねちゃん……」
私はじっと成田くんのことを見つめる。
「実はね、ホワイトチョコって、意味があって……“純粋な関係を望む”ってことなんだ……いや、俺、まわりくどいな……」
私はドキドキで心臓がはちきれそうだった。
「あかねちゃん、俺、あかねちゃんのこと、好きです。付き合ってください!
大学も実は同じところ狙ってるんだ!!!
私は、驚きと嬉しさで固まってしまった。……それと同時に涙があふれた。
「成田くん……。私も……ずっと好きだったよぉぉぉぉ……」
泣きながら言う私。
成田くんは私に近づいてきて、
「これからはずっと一緒にいよう」
成田くんはそう言って、両手で優しく、そして大切そうに抱きしめてくれた。
修学旅行と大学受験のタイミングは離れていると思うのですが(本州はわかりませんが)、修学旅行中で合格報告は違和感があります。
同じ大学に行きたいんだ!という方が自然かもしれません。