「ララのおばあ様を助けたその人が、コロポックル達の存在を他者に話さなかった理由がわかるか?」

 ララがはっとした表情をした。

「―――おばあ様を守るため」

 理由がやっとわかった、という様に静かに呟くララ。

「そう。ララのおばあ様や一族の存在自体を守る為だ」

「とても良い人に出会ったのね」

「その通りだ」

「本当にごめんなさい」

 事の重大さに気が付いたらいしいララがもう一度、友之に頭を下げた。

「わかれば良い。そうだ、沙耶が夕飯の準備をしているから手伝ってやってくれるか?」

 台所の方を指してにこやかに笑う友之に、はいっと元気に返事をしたララは走って行く。

それを見送った後で有雪の方に向き直った友之は先程と同じく怒気を含んだ声音を発した。

「で?お前はなにを考えているんだ」

 友之の怒りは消えてなかったらしい。有雪はララに対して笑顔を見せたので完全に油断していた。

「俺が付いていれば大丈夫かなって考えてたのは素直に認める」

「そもそも、俺はお前が人間に化けることだってよしとはしてない」

 鋭く以前から指摘されていたことを言われた有雪はバツが悪そうにした。

「ごめん」

 有雪が人間を傷つけるとは考えていない友之だが、本来精霊である有雪。九条家以外の人間の前に安々と姿を見せてはいけないのだ。

「コロポックル達の件とお前の件と、今回はまとめて反省してもらうぞ。そもそもそれ

は必要な時だけって約束だろう」

 人間に化けるのは「その必要がある時だけ」というのが二人の決まりことだった。九条家は人々の困り事を解決したり、相談に乗ったりもする。その時に有雪も人々を案じて人間に化けて友之に付いていくことがあった。友之が一緒にいれば怪しまれても(ほとんどない)誤魔化せるので問題ないのが、有雪だけだともしもがあった時に非常に困る。

「今回のことは俺が悪い。二度としないよ」

「二言は無いだろうな?」

「うん」

 少々、軽薄な所はあるが有雪は人々の幸福を願っている優しい性格の持ち主なのは友之が一番理解している。だが、その一方、私利私欲のために他者を傷つける人間や卑劣な人間には容赦が無い。もしもコロポックル達を利用する人間が出てきたら真っ先に殺してしまうだろう。友之はそれも危惧していた。