友之には秘密で街へと出掛けていた有雪とララは森の入り口付近まで戻って来ていた。誰にも見つからない様に森に入ろうとしていたその時。

「どこへ行っていた?」

 怒気を含ませた友之の声音が有雪とララの背後から響く。振り返ると、鬼の様な形相の友之が彼等を見ている。付いて来い、と友之が有雪とララに言い放った。明らかに怒っている様子に有雪とララは黙って従わざるを得ない。友之は普段から怒りを露わにしない男であるが、今はそうではなさそうだ。友之は自身の家屋まで無言で歩いて行く。居間に通された彼等は座れと促されて正座した。

「――――で?」

 やはり、怒っている友之にララが頭を下げた。

「ごめんなさい。私が有雪様に頼んで街へ出てみたいと言ったの。有雪様は悪くないわ」

 ララが有雪を庇うが、友之は黙っている。

「ごめん、友之。少し位なら問題無いと思ってララを連れて街へ出た」

 素直に謝罪する有雪を一瞥して友之は大きい溜息を付いた。その表情からは先程の怒りは消えて呆れているような顔をしている。

「どうして俺がコロポックル達を他の人間から隠していると思う」

「それはわかってるよ」

「お前には聞いてない」

 有雪の言葉をぴしゃりと友之が遮って、ララに目線を向ける。

「私達を守る為でしょう」

 恐る恐るララが友之を窺うようにして口を開く。

「そう。人間の中には利己的な奴もいるんだ。ララが人間に憧れを持っているのはわかるが、あまり人間を信用し過ぎるな」

 真剣な表情の友之にララは頷いた。有雪ではなく、ララ自身に危機感を持って欲しい気持ちが見てとれた。有雪は人間に化けていても精霊なので危なくはないがコロポックル達は対、人間となるとかなり不利である。最悪、命を奪われてしまうかもしれない。友之はそこまで考えているのだ。

「で、でも、私の祖母は人に助けてもらった経験があるの。だから悪い人ばかりではないでしょう」

 ララの祖母は人間に窮地を救われたことがあるらしい。その話をララに何度も聞かせていて人間と交流を持たないコロポックルだが、ララが人間に交友的なのはきちんとした理由があった。