「焼き上がるまで十五分ほどお時間かかりますので、お待ちください」
注文を終えると下がっていく店員さん。
私の周りにはまばらだけれども女性客が沢山。今日は休日日曜日。ここ、円山にあるパンケーキ屋さんは盛況していた。
今日は家でのんびり休もう、と思っていたのだけれどふと無性にパンケーキが食べたくなってしまった。
テレビ番組でパンケーキを見てしまったのが悪い。私の頭は美味しくて甘いパンケーキで洗脳されてしまったのだ。
自宅で作ろうとも思ったが、ちょうどホットケーキミックスを切らしていた。それに食べたいのはシンプルなホットケーキではなく、沢山クリームやフルーツが乗った甘い甘いパンケーキなのである。
どうせホットケーキミックスを買いに行くなら食べに行くのも変わりない、と私はいつもの仕事道具を持ってこのお店にやってきたのである。
前に一度友人に連れてきてもらったことがあり、すっかりここの美味しいパンケーキにのめり込んでしまった。
焼き上がりまで時間がかかるので、誰かときていれば会話もできるが一人だとそうもいかない。
本当は日曜日は仕事をしない主義ではあるが、焼き上がるまでの十五分間だけ集中して仕事をすることにした。
「おまたせしました、悪魔のぱんけーきです」
そして仕事に一区切りがついた頃、タイミングよく待ちわびたそれが運ばれてきた。
黒い正方形のお皿に乗せられた二段重ねのパンケーキ。周りにはベリー系のフルーツが散りばめられ、アイスも添えられている。
パンケーキの上にチョコレートで刺さった悪魔のしっぽがちょこんと乗せられている、まさに“映える”一品だ。
「いただきます!」
大慌てでパソコンを片付け、ナイフとフォークを手に持つ。
早速パンケーキにナイフを置いてみると、動かしてもいないのにしゅわっと切れた。
この店のパンケーキはスフレ系で、一口食べると噛まずともふわっ、とろっととろける。そのまま飲み込める魅惑のパンケーキなのだ。
「……っ、おいしい」
一口食べて思わず身悶えた。
ケーキシロップも数種類から選べ、おまけにかけ放題。たっぷりかけて甘くして食べても良い。
甘いパンケーキにベリーの酸味がたまらなくあう。
ドリンクをホットティーにしておいてよかった。甘いものにしたら口の中が甘すぎてパニックしてしまう。
「ふふっ……」
思わず自然と頬が綻んでしまう。こんなに幸せな休日を過ごしていいのだろうか。
罪悪感に苛まれそうになるが、食べる前に仕事を頑張った。これは自分へのご褒美。
たまには自分を甘やかし、英気を養うのも重要だろう。
そうだ。私の仕事はパソコンと体一つあればどこでもいけるのだから……今度は思い切って札幌を飛び出してみるのもいいんじゃないかと思えてきた。
色々考えるのはいいが、まずは目の前の幸せなパンケーキを存分に噛みしめようじゃないか。
そうして私の休日は穏やかにすぎていくのであった。