「あー……さいっこう」

 カフェワーカー、雪野晶。今日、私は足湯にきています。
 場所は札幌の温泉地、定山渓。某温泉旅館の別館、日帰りでも利用できる足湯施設。
 それもただ、足湯があるわけではないのです。お洒落な日本庭園、その中にある建物には沢山の名作椅子が置かれている。
 セルフサービスでコーヒーや紅茶、りんご酢などの豊富なドリンク、さらには手作りのお菓子が置いてあって食べ放題、飲み放題。
 千円ちょっとで一日中のんびりと足湯に浸かり、座り心地のいい椅子に座り、お茶やお菓子を好きなだけ楽しめる。まさに夢のような場所である。

 足湯は外にあり、寒い季節は少々寒さが見に堪えるが、膝掛けの貸し出しも行っているし、意外と足湯に使っていると上半身もぽかぽかと暖かくなってくる。
 雨や雪が降っていても、足湯スペースには屋根があるため濡れる心配はない。
 もし途中で湯が緩くなってもすぐ側に温泉の元栓があるので、自由に温度調節までできる、なんて至れり尽くせりな場所なのか。 
 以前一度紅葉の時期に訪れたことがあったが、周りの木々が全て綺麗に色づきとても綺麗だった記憶がある。
 今時期はコロナ禍、そして冬時期ということもあってかなり人は少ない。
 おかげで私はのんびりと足湯に浸かりながらノートパソコンで仕事をし、たまに室内に戻り卵形の椅子に篭り仕事をし、美味しいお菓子やお茶に舌鼓を打ちながら贅沢な仕事時間を過ごした。

 施設の奥には壁一面の本棚があり、北海道に関する歴史書や写真集など様々な本を読むことができる。
 その手前にある机にはここを訪れた客が自由にメッセージをかけるノートが置かれており、様々な文章が書かれていた。
 最初の方は道外から来たというコメントが多く見えたが、最新のページになるにつれそれは減ってくる。
 新型コロナの影響で、この定山渓の温泉街も大打撃を受けている。
 緊急事態宣言で GoToトラベルもなくなった。ならば今、それを支えていけるのは道民である自分たちなのではないのだろうか。

 きちんとルールを守り、節度ある範囲で自由に楽しむ。
 引き篭ることも大事だが、こうしてたまには外に出て歩くのも悪いことではないと思うのだ。

『足湯、気持ちよかったです。また必ず来ます』

 私はそうメッセージを書き残して、足湯を出た。
 そうだな……帰りにお土産屋さんで温泉まんじゅうを買って帰ろうか。

 札幌市内から車で一時間もあれば来れる温泉地。
 日帰りでも、宿泊でも、気軽にまたこようと思いながら私は今日の仕事を終えたのであった。