私は雪野晶。フリーランスのグラフィックデザイナーだ。
 在宅ワークにも飽き飽きし、初めてみたのは外での喫茶仕事(カフェワーク)。

 今日は打ち合わせの帰り、南十一条通りを走っていると目に入ったショコラティエ。
 デパートや空港にもお店を出している札幌ではちょっとした有名なお店。折角だから美味しいショコラを幾つか買っていこうと車を止めた。
「いらっしゃいませ」
 広々とした店内にはチョコレート菓子や焼き菓子などが並んでいる。
 主役のショコラは奥のショーケースにずらりと並んでおり、なんとなんとケーキまで売っている。
「あ、イートインがあるんだ」
 目移りしながら商品を見ていると、ふと店奥にイートインのスペースが見えた。
「ご予約のお客様が優先なのですが、今はちょうど空いておりますのでよろしければ」
「ぜひ!」
 二つ返事で席に座る。
 売っているショコラやケーキを持ち込んでのイートインも可能だが、このサロンでしか食べられないメニューもあるという。
 やはりショコラティエに来たのだからチョコレートを堪能しなければ、と私はあっという間にメニューを決めた。
「すみません。チョコレートパフェと、ホットショコラをお願いします」
 注文を決め、私は今か今かと料理が運ばれてくるのを待つ。
 ただ黙っているのも我慢できないので、その間次の仕事の資料をまとめておくことにしよう。
「おまたせしました」
「素敵……!」
 待つこと十分、運ばれてきた料理に私は思わず声を上げた。


 そこはまさしくチョコレート尽くし。頼んだチョコレートパフェは上から下までチョコレート色。フルーツなどは一切なく、チョコレートアイスにチョコレートクリーム、チョコレートムースなど食感がそれぞれ違うチョコレートが夢のように詰まったチョコレート好きのためのパフェ。
「いただきます!」
 手を合わせ、早速パフェに手を伸ばす。
 口の中に広がるチョコレートの甘味、そして苦味。ざくざく、とろっと、一口で色々な食感が楽しめる。これぞ一生懸命働いた者へのご褒美といっても過言ではない。
 一緒に頼んだホットショコラも甘さだけではなくほのかに感じる苦味がまたたまらない。
 疲れた時には甘いものに限る。
 口の中がチョコレートで一杯になる幸福を私は噛み締めるのであった。

「……よし、帰ったらまた頑張ろう」
 あっという間にパフェを食べ終わり、冷えた体を暖かいショコラで温める。
 帰ったらもう一仕事。そのためにはやはりまたご褒美を用意しなければいけない。
「ケーキとショコラ、買って帰ろ」
 カフェを出たとしてもまた目の前に美味しそうなケーキやショコラが目に留まるのはなんて美味しい作戦だろう。
 私はまんまとチョコレートケーキとショコラを数粒買い、ウキウキしながら店を後にした。

 甘いものは人類を救う。
 美味しいチョコレート、今日もどうもありがとう。