礼文島-メノウ浜

「お帰りなさ~い!」

玄関の屋根の上に乗って、髭づらのお兄ちゃんが日章旗をブンブン振り回してる。

「何だ!」

とんでもないところに来てしまったのにようやく気が付いた。

ここは礼文島のユースホステル「桃岩荘」。

ジャパンユースホステルガイド
http://www.jyh.or.jp/info.php?

桃岩荘体験談ブログ
jyhno=105https://tabippo.net/momoiwasou/2/

ツーリストの間では日本3大「バカユース」と言われている。

一応そのあたりの噂は聞いていたのだが、

予測を一発目で超えられた。

とにかくスタッフのテンションが以上に高い。

僕は稚内で知り合った梶くんと一緒にここに泊まる

「ああ、すごいな」

「ですね」

「だよね」

日章旗のお兄ちゃんは、半ズボン半裸で、何か訳のわからないコトを叫んでる。

ペアレントはやたら親切。

簡単な説明を受けて、訳がわからないまま、部屋に通され、荷物を置いた。

「何か、変なとこにきたねぇ」

「ああ、こわいかも」

「まあ、ひとまず休もう」

僕は、自転車で北海道を旅してる、宗谷岬で台風に遭遇してエライ目にあって、

その疲れがとれないままでここに来た。

お天気ボーイの梶君も(彼が旅行に行くとぜったい晴れると豪語している、これはホントだった)

「ちょい休みましょうか」

「ああ」

突然

「みなさ~ん、海岸に行きますよ」

突然ペアレントが部屋に入ってきてそう叫んだ。

「なに、なに」

「めのうが獲れるんですよぉ」

「えっ、めのうって何?」

「ホ・ウ・セ・キ」

ペアレントが

「綺麗な宝石が山ほど獲れるんです」

「うそ」

「いやホント」

「いやー、それはないでしょ」

「僕を信じてください」

ペアレントはマジ顔。

「分かりました行きます」

「じゃ、20分後にロビーに来てください」

台風に襲われたような気持ちで、梶君とロビーに行く。

少し夕日が傾きかけている。

茜色の光に染まりながら、20人くらいの宿泊者がぞろぞろと海岸に行く。

「おお」

「綺麗」

「凄い」

それは予想超えた美しさで、海は僕たちを迎えてくれた。

「さあ、この浜辺にめろうがありますよ」とペアレント。

僕たちは、ほんとかよと思いながら、砂を掘りはじめた。

「あったー」18歳くらいの女性が声を上げる。

「こっちも、こっちもあったよぉ~」。

あちらこちらで歓喜の声があがる。

ホントなんだ、

疑っていた僕も本気になった。

掘る。

掘る。

ひたすら掘る。

すると、びっくりするくらい綺麗なブルーの宝石なようなものを掘り当てた。

めのうは緑。

これは何なんだ。

もしかしたら凄い宝石かも…。

胸を躍らせながらペアレントに誇らしげな顔をして見せた。

「はあ、これはですね」

暫くの沈黙

「ガラス瓶です」

うそ、こんなに綺麗なのにぃ。

「海にもまれてガラスのかけらがこんな風になったものです」

「……」

そして、僕たちはユースに帰った。

夕日がとんでもなく綺麗だったのがせめての救いだ。

梶君は小さなめのうをゲットして嬉しそう。

さて、ここからが一生の後悔なのだが、

食事のあと、岬の広場でダンスパーティーがあった。

知り合った2人り連れの女の子と一緒に出掛けた。

それは、岬のそばにある広場で、このユースのステージになっているようだ。

テンポがいい音楽、

群青色の空

聞こえてくる波の音

そして、笑顔の輪

ロマンチックの極致だ。

ここでは、普段着でみんな自分を解放している

「恋人岬」なるものの看板があった。

興味あり。

誘った女の子の一人、裕子ちゃんを誘おうと思った。

ガーン、東京に彼がいるみたいでアウト。

すごく可愛かったのに…。

仕方ないので、梶君とうだうだして、

宴は終わった。

あの時

「今日だけは彼のコト忘れよ」とか、キザなコトバをかければ

良かったのだが、そんな甲斐性はゼロ。

ということで桃岩荘をあとにしたのだが、

バカユース度より、裕子ちゃんのコトが忘れられのは

礼文島のいたずらでしょうか…。

あれから20年。

今でも、あの夕日と裕子ちゃんのアーガイルのベストが忘れられない。

PS;ペアレントさんありがとう、あんなに楽しい気持ちになったことなかった