今日は彼女とドライブデート。
 札幌から車で約一時間。歴史を感じる港町、小樽にやってきた。
 車窓から小樽運河を眺めながら、向かった先はおたる水族館。最近話題になったやる気のなさすぎるペンギンショーがやっている人気施設である。
「わ、すごい! ウミガメ」
 館内に入るとまず迎えてくれるのはウミガメ。
 水に潜ってはときどき呼吸のために浮上する。そののんびりとした動きがたまらなく可愛らしくて、ついつい足を止めて見てしまう。
「そろそろ行こうか」
「そうだね。ついつい見ちゃった」
 ウミガメを観察すること十分。ようやく本格的に館内を見て回る。
 様々な魚や、イルカを見て周り、外に出るとアザラシやセイウチがいる海獣館がある。
『さて、ペンギンショーはこれにて終了。また次回をお楽しみに!』
 例のペンギンショーを楽しみにしていたのだが、タイミング悪く終わってしまったようだ。
 次の回が始まるまでのんびり外にいる動物たちを見て回ることにした。
「ね、魚あげられるんだって!」
 彼女が指さしたのは餌やりコーナー。
 バケツに入った魚を、動物たちにあげられるようだ。
「やってみようか」
 お金を払い、魚が入ったバケツを手に歩き出す。
「誰にあげようか……」
 二人で迷いながら歩いていると一頭のアシカと目があった。
「よし、あの子にあげてみよう」
 そしてトングで魚を掴み、そのアシカに向かって放り投げる。
 魚は綺麗に弧を描き、口を開けて待っているアシカの口に——。
「あっ」
 その瞬間、目の前を何かがよぎった。
「へ?」
 魚はアシカの口には入らなかった。
 なんと、一羽のカモメが魚をくわえて奪い去っていったのだ。
「うそだろ!?」
「あははっ、とられてやんの!」
 驚く男の隣で大爆笑する彼女。
 魚を食べられなかったアシカは不満げな目でこちらを見ている。
「よし、今度は私が……!」
 今度は彼女が魚を投げる。
「あっ!」
 今度こそ、と思ったがまたもやカモメに取られてしまった。
「人のこと言えないだろ!」
「もー、全然アシカくんに魚あげられない!」
 とうとうアシカは魚をもらえないことに耐えかねてあうあう鳴き始めてしまった。
「ごめんごめん、今あげるから!」
 そうして三回目のチャレンジ。
 放り投げた魚は今度こそ、綺麗に目当てのアシカの口の中に入った。美味しそうに丸呑みして、もう一匹頂戴と視線を送ってくる。
「ナイスキャッチ!」
 恋人はにこやかに微笑みあった。
 こうして今日も小樽水族館では様々な家族、カップルたちがそれぞれ楽しい時間を過ごしているのであった。