「俺のじいちゃんや伯父夫婦は様似町に住んでいるんだよ。今度のGWに行こう」

「GWなら通りすがりの街に泊まったりのんびり旅行したらいいんじゃない?」

「それは初めて行くなら体力的に無理だよ。道のりは350km、休憩とか入れたらトータル7時間くらいかかるからね」

「それは大変そう。運転交代したいけど、まだ入籍してないから車の保険も対応してないし…」

「俺は慣れてるから大丈夫。だけど体力的に寄り道は出来ないかなって事」

夫と結婚を決めた年の4月、結婚の挨拶で道民でもなかなかの長距離ドライブへ行く事となった。

7時間ドライブでまず心配なのが私の乗り物酔いであった。そこで夫オススメの少し強めの酔い止めを飲み、初めての様似行きへ挑んだ。

朝の7時頃に旭川を出て、南富良野まで一気に行き占冠の道の駅へ。ここからしばらく峠や山道が続き休憩は出来ないので飲み物を口にするのも計画的に。その次は桜で有名な静内まで行き、そこで昼食をとってから一気に様似町へ行く。途中で浦河の馬の看板や三石の羊羹の店が見える。でも基本的に寄る時間は無い。

酔い止めが劇的に効いてほとんど私は眠っていた。

様似町に着いたのは15時頃だ。

そこで夫の祖父と伯父夫婦に初めての挨拶をし、これから行う結婚式の話などをした。

今でも驚いてるのが、90近くなる夫の祖父がまだ20代だった私でもしんどいなと思うこの道程を来て旭川の挙式に伯父夫婦と共に来てくれた事である。元々トラック運転手で長距離が苦ではなく、もう年だからこんな理由でもないと旭川には来ないと言ってくれていた。その通り、これが最後の来旭になり以後毎年私達が生まれた子供の顔を見せに行っていた。

子供連れで7時間の山道を乗り越えるのは正直とても大変だ。酔い止めを飲む事は出来なくなり休憩の時間も回数も増え、座席から動かすわけにいかないのでDVDの不調やタブレッドの充電にヒヤヒヤする事も増えた。

それでも祖父が体調不良で入院したと聞いたら我が家は7時間の道程を越えれば会えるんだ、と手際よく準備して当然すぐに駆けつけた。

現在夫の祖父は亡くなり、海辺にあった古い家も無くなってしまった。伯父夫婦も自分の子供達近くに転居を考えてるらしく、様似町にはもう2年程行ってない。

大変な道程だけど試行錯誤して大事な人に会いに行く。

北海道の長い道程は大事な一つの思い出になるのではないかな、なんて思いながら今日も私はその道を進んでいる。