桜の見頃はもうすぎた時期でした。

 小高い丘の上に祀られている湯倉神社を訪れた時こと。

 ほんの少し花が残っているぐらいだろうという私の予想は裏切られ、風が吹くたび薄紅色の花びらがひらひらと舞う、そこかしこに水仙の花が咲き乱れる、そんな美しいところでした。

 昔きこりが湧き湯で病を治し、その返礼として薬師如来を刻み、小さな祠を建てて安置したことが湯倉神社の起源、函館市の名湯湯の川温泉の起源でもあります。

 史実では松前藩第九代藩主高広が幼い時に重い病にかかり、医者や薬でも治らない。ある夜母親が神様から夢のお告げをいただいて、ここの温泉で湯治をさせたところ、すっかり平癒した。そのお礼として母は社殿を改造し、薬師如来像と鰐口を奉納したとのことです。

 駐車場が境内の横手にあるので、鳥居をくぐらずに境内へ。

 函館空港から市街地に抜ける大通り沿いにあるせいで、車通りが多いのにもかかわらず、

 境内に入ると清浄な気が漂っているのが感じられました。

 朱塗りの鳥居の正面にどっしりとかまえた社殿はけして雅やかではありませんが、境内には小さな神社が点在していたり、石碑や御神木、縁起物など、眺めているだけで目を楽しませてくれる造りとなっています。

 祀られているのは大己貴神(おおなむちのかみ)、少彦名神(すくなひこなのかみ)、倉稲魂神(うがのみたまのかみ)。

 大己貴神は別名大国主神(おおくにぬしのかみ)といい、七福神の一人大黒様でもあります。

 大黒天とはインドのシヴァ神が由来の仏教の神様ですが、神道の大国主神と習合し、五穀豊穣の農業の神様として信仰されてきました。

 財運と福徳を司る七福神の一人としても古くから信仰されています。

 

 大国主神とともに国づくりをしたのが、少彦名神。医術、酒造の神様です。

 温泉の神様でもあるので、湯の川温泉の起源となったこの神社の御祭神にふさわしい神様といえます。

 倉稲魂神は穀物の女神様です。須佐之男命(すさのおのみこと)の娘とも、伊弉諾伊奘冉(いざなぎいざなみ)の娘とも言われています。

 どちらにしろ大国主神の遠い親戚筋にあたります。

 

 三人の神様をお祀りしている湯倉神社には、五穀豊穣、商売繁盛、大漁満足、家内安全、健康長寿、交通安全、開運厄除、縁結び、夫婦和合、安産、子育てなど、数多くのご利益があるそうです。

 社殿に向かって右奥に神輿殿があります。そこには小槌が三つ置かれています。

 大黒様といえば打ち出の小槌を持っています。それにちなんだ小槌には、開運招福、諸願成就、健康長寿、身体堅固のご利益があります。

 中央に一番大きい「開運」の小槌。

 左手に「身体堅固」の小槌。

 右手にはきれいな彫刻がほどこされている小槌。

 開運招福のご利益にあやかりたくて「開運」の小槌をふってみましたが、片手で持つとずっしりとかなり重たかったです。

 神輿殿の前に小槌の使い方が書かれたスタンド看板があるので、よく読んでからトライしてみてはどうでしょう。