「夏はやっぱりジンギスカン」

 今年もやってきた。北海道の短い夏。
 寒い季節が終わり、ようやくやってきた暑い夏。
 関東に比べれば過ごしやすいとはいわれているが、やはり道民は暑さに弱い。
 真夏日が超える日は、大概の家庭がこれをはじめる。

「表でジンギスカンするぞ!」

 ガレージの奥から埃かぶったバーベキューコンロを取り出し、家族みんなで準備を始める。
 なにも一家庭だけではない。お隣さん、お向かいさん、色んなところから漂ってくる炭の匂い。
 スーパーに行けば焼き肉コーナーにはずらりとBBQ食材が並び、暑い夏はそれらが売り切れる。

 北海道は面積が広く、家と家の距離も多少離れていることもある。
 真夏に、庭でバーベキューする光景は最早夏の風物詩といっても過言ではないだろう。

 子供にとっては非日常。
 大人にとっては昼下がりから合法的にビールを飲める口実なのだ。

 ジンギスカン鍋を出したいところだが、今あるのは一般的なバーベキューコンロ。
 味付けジンギスカンではなく、生ラムを購入し野菜と一緒に焼く。
 つけて食べるのは焼き肉のタレではなく、オレンジ色のラベルが目印のジンギスカンのタレ。そこに七味唐辛子とおろしにんにくを少し入れて食べるのが最高に美味しいのだ。
 焼き上がったジューシーなラム肉。味が濃いタレ。それを冷たいビールで流し込む。これが、最高の組み合わせ。

 日が高い内から夜暗くなるまで、バーベキューは続いていく。
 子供たちは水遊びをしたり、庭で遊んだりと自由に。大人たちは暑さを紛らわすために内輪を仰ぎながらビールを煽る。

 そして夜になれば、スーパーで帰りに買った花火を皆で楽しむ。
 キャンプには行かなくても、家で楽しむアウトドア。

 札幌……いや、北海道各地の住宅街では当たり前に見られる光景である。
 夏のジンギスカンは最高だ。
 夏が過ぎればまた冬が来る。少しでもこの暑く、明るく、楽しい夏が長く続いて欲しいと祈るばかりである。