優都は、雪の森を走っていた。コロポックル達と言う通り障壁が破られている。森の中部へ進んで行くと、二人の男が優都達に向かって歩いている。
「あいつ等か!」
優都は警戒しながら二人との距離を詰めて行く。すると、二人は優都の気配に気が付いたのか振り向いた。
「大和、こいつが九条優都?」
「そうだよ。彼が現当主だ」
「へぇ」
分家の一人である弟の蘇芳が、優都の顔をまじまじと観察した。じろじろと見られた優都は蘇芳を睨んだ。
「誰だよ?」
「俺は九条蘇芳。大和の弟」
「で、ふざけた電話を掛けてきたのはそっちか?」
優都は大和の方を睨みつける。
「そう。さっきぶりだね」
大和は柔和な顔をしているが、笑ってはいない。『笑顔』を顔に張り付けているだけの表情。
(優しそうに見える人間程、信用ならねぇ)
敵意を隠さない蘇芳と、隠す大和。どちらも好戦的な事を優都は感じていた。携えていた雪化粧に力を込めて優都はまず大和に向かって行く。
「僕狙い?」
鞘に収まったままの刀でも、それなりの力を籠めればダメージは与えられる。この刀は何故か鞘から刀身が抜けないのだ。それをわかった上で、優都は両手で刀を大きく振り上げる。大和はそれを避けて、優都の腕を左手で取ろうとするがそれは叶わなかった
「あれ?」
すぐさま優都は右手に刀を持ち変えた後、間髪入れずに大和の腹を蹴っていた。
「っ!……てて。流石だね」
「結構、効いたろ?」
腹部を押さえながら、大和は流石に顔を歪ませる。だが、すぐににこやかな表情に戻った大和を一瞥して、優都は刀をその場に刺した。重心を落として構えると大和も同じような体勢になる。互いに体の正面を取られない様にしながら、隙を付き攻撃を繰り出そうとしていた。横で見ていた蘇芳が「加勢しようか?」と大和に声を掛けたが、断られてしまう。
「えー?暇なんだけど?」
協力を拒否された蘇芳だが、すぐにすっと表情を変えて振り返る。すると、林の中から狼が姿を現した。
「あいつは敵よ!」
「捕まえるのです!」
なんと狼は一匹だけではなかった。森に住んでいる狼の群れが蘇芳を取り囲む。雪乃の命を受けてやって来たらしい狼の背中には「隠れてろ」と優都に指示されたナナとノノが乗っている。唸り声を上げて、一斉に狼達が蘇芳に突撃した。
