蔵の中は使用されなくなった物、長い巻物等が雑に保管されている。口を腕で覆い、奥へと進んで行くと、黒色の箱が多く保管されていた。優都はその一つを取って、開けるとそこには『雪森』と書かれた本が入っていた。本といっても紙を黒紐で留めただけの簡易な物だった。

「かなり古い紙だな」
優都はその表紙を捲ると、森に関する日々の様子が書かれている。

(日誌か?)

本には、森で起きた事柄を記してあり優都は興味が湧くが今はそれを読んでいる場合ではない。すぐ、他の箱を開けて分家に関しての手掛りがないか探し始めた。三つ目の箱を取ろうとしてライトを照らすと、箱に模様が描かれている。

(これだけ他の箱と違う)

優都はその箱を持って蔵から出る。明るい場所で再度確認すると箱の側部に雪の結晶が描かれていたのではなく、彫られていた。中には、四つ折りに折られている大きめな紙と先程の日誌と同じ様な厚めの本が入っている。その四つ折りの方を取り出して広げてみると、右横に九条家と書かれていた。

「これって家系図?」

明らかに貴重な物だと感じた優都はそれを本宅へ持ち帰る。もし無くしたり、汚したりでもしたら源治に絶対に怒られると判断したからである。

 自室で優都は再び、家系図を広げると九条蓮慈の名前も記載されているのが確認出来た。図を辿っていくと、名前に大きく赤色でバツ印がついている者がいる。それも一人ではなく数名だ。この者達が恐らく、雪乃が言っていた「家を出た者」だろうと優都は推測した。

(こいつ等の子孫が雪那の封印を解こうとしてるってことだよな)

 家系図は、蓮慈の孫の代で終わっており家を離れた者の詳細までは記載されてはいなかった。優都はもう一つの本の方を開いてみると一枚目のページに『雪化粧』と書かれていた。

「雪化粧ってじいちゃんの部屋の刀?」

 優都はすぐに本を持ったまま、源治の部屋へ駆けて行く。源治の部屋に飾られている刀は彼がとても大切にしており、安全面から「決して触ってはいけない」と幼い頃よりきつく源治に言われていて、優都は触れたことは無かった。だが今は非常事態で、仮にも当主の立場なので遠慮せずに雪化粧を手に取る。予想以上に、重い刀は鞘から柄の部分まで真っ白だ。優都は鞘から、刀身を抜き取とうとするが何故だか抜けない。

「え?」

 優都はもう一度力を込めて試すがやはり出来ない。

「なんなんだ?この刀?」

優都は拍子抜けして雪化粧を元の位置へ戻した。少々がっかりしながらも持ってきた本を読み進めていくと『雪那ト対峙シタ際、雪化粧ノ刀身ガ姿現シタ』とだけ書かれていた。

(つまりこの使えない刀で雪那を倒したってことなのか?)

「え、まじで?そんなことってあんの?」

 鞘から抜けない刀と邪悪な雪那。この本の記してある通りなら雪化粧は雪那に対するなんらかの力を持っているということになる。優都は気になって、次のページを捲ろうとするが階下から声が聞こえて手を止めた。