僕は今日、想いを寄せている同じクラスの佐伯さんと二人で出掛ける。
 場所はサッポロファクトリー。レストラン、ショップ、映画館、ゲームセンター、色々なものが取り揃っている複合商業施設だ。
「中田くん!今日はよろしくね!」
「うん。こちらこそ、よろしく」
 大通駅で待ち合わせてそこから「二百メートル美術館」という長い距離に渡って様々なアート作品が展示してある地下道を歩いて目的地へと向かう。
 晴れてたり暖かい日は外を歩いてもいいのだが、冬になり寒さが増してくると道民は地下道を活用することが多い。
「この間、学校でね——」
 佐伯さんは楽しそうにいろいろな話をしてくれる。
 大通駅からファクトリーまでは少し離れているけれど、彼女と二人で並んで歩けるのが楽しくてあっという間にたどり着いてしまった。
「中田くん、キャラメルポップコーン好き? よかったら一緒に食べない?」
 映画館といえばポップコーン。佐伯さんと同じように僕もキャラメルポップコーンが大好きだ。
 共通点が見つかるたびに僕はついにやけたくなるのをぐっと堪えて、一緒に売店に並んでポップコーンと飲み物を買った。
 見る映画は人気のアニメ映画。
 僕が佐伯さんにこの原作漫画を貸したところかぐっと距離が縮まったのだ。
 二人で出掛ける緊張感は何処へやら。映画が始まると僕たちは夢中になってそれを見た。だけど時々僕は隣に佐伯さんがいることを思い出してしまう。すぐ隣に感じる佐伯さんの気配にドギマギして、所々映画の内容が飛んでしまった。

「映画面白かったね!」
「うん。見にきてよかったよ」
 映画が終わり、アトリウムという吹き抜けの大きなホールに出てきた。
 そこには冬になると十五メートルもある大きなクリスマスツリーのイルミネーションが点灯されるのだ。
 上から見下ろすと、幻想的に輝くツリーがとても美しく見えた。
「イルミネーション、きれいだね」
 柵に持たれながら、佐伯さんはとても楽しそうにツリーを眺めている。
「中田くん、今日はありがとうね。最近家に引きこもってばかりだったから……いい気分転換になったよ」
 僕の方を見て佐伯さんは目を細めた。
 マスク越しで彼女の表情まではわからないけれど、笑ってくれているのなら嬉しい。
「こんな時期だから……誘うの迷ったんだけど、声かけてみてよかった」
 僕も照れ臭そうに笑う。
 二人で声を出して笑い合う。和やかな空気。
「あの……さ、佐伯さん」
「ん?」
 クリスマスツリーが青く輝く、薄暗い場所。
 そこに立つ佐伯さんはお世辞なんかではなく本当に可愛かった。
 この幻想的な雰囲気が僕の背中を押す。今なら勇気を振り絞っていい出せると思う。
「僕……佐伯さんが好きです。よかったら、僕と、付き合って、くれませんか」
 勢いに任せて出た言葉は緊張で震えていた。
 恥ずかしくて怖くて、佐伯さんの顔を見られずにいると僕の手に触れた暖かくて柔らかい感触。
「はい。よろしく、お願いします」
 佐伯さんは僕の手をぎゅっと握る。
 その瞬間、クリスマスの音楽が流れ始め一時間に一度のクリスマスツリーのショーが始まった。
 美しい光景は、僕らを祝福しているようにもみえた。